東京の名店「カフェ・バッハ」の田口護氏が著した「コーヒー抽出の法則」に、コーヒーを淹れる際の湯温について解説されていました。
 
言うまでもなく、湯温はドリップに大きな影響を与えます。


 
湯温の違いはコーヒーにどんな変化を与え、適した温度はどれくらいなのでしょうか?
 
同書の61~63ページを参考にまとめます。
 
※当コンテンツの内容はペーパーを使ったハンドドリップを想定しています


コーヒー抽出の法則
※試し読み、Kindle版あります




ペーパードリップに適した湯温

まずはコーヒーの抽出と湯温の関係の基本として、この二つを挙げておきます。

・湯温が高いほうが成分の抽出量が上がる
 
・温度が高いと苦みが出やすく、低いと苦みが出にくく酸味が立つ

 
高温のお湯で淹れると成分の抽出量が増えるので、苦みや渋みも出やすくなります。
 
つまり湯温が高すぎると苦みや渋みが過剰になるリスクがあり、低すぎると酸味が目立ちすぎて苦みとのバランスが崩れる可能性があるのです。
 

 
それでは具体的に「適した湯温」とはどれくらいなのでしょうか?
 
田口氏はペーパードリップの場合、以下の温度を目安にしています。

86℃以上
湯温が高すぎる。泡が出て膨らみすぎて表面が割れ、蒸らしが不十分になる。
 
84~85℃(浅煎り、中煎りに向く)
やや湯温が高め。味が強く、苦味が立つ。
 
82~83℃(全ての焙煎度に向く)
適温。バランスのとれた味わいに。
 
75~81℃(深煎りに向く)
やや湯温が低め。苦みはおさえられるがバランスを欠く味に。
 
74℃以下
湯温が低すぎる。うまみが十分に抽出できない。蒸らしも不十分になる。

 
いまはハンドドリップで湯温計を使うのが当たり前になっています。
 
上の温度に合わせたお湯を使用するのも比較的容易ではないでしょうか。
 
その際はポットのお湯を柄の長いスプーンなどでかき混ぜて全体の温度を均一にし、中央部の湯温を計測するのをお忘れなく。

焙煎度や焙煎から経過した時間に応じた湯温の目安

カフェ・バッハでは豆の焙煎度も考慮してお湯の温度を変えています。
 
目安は以下のとおりです。

深煎りはやや低温(75~81℃)か中温(82~83℃)で抽出する。
 
浅煎りはは中温がやや高温(82~85℃)で抽出する。

 
さらには焙煎からどれくらい時間が経っているかも考慮します。
 
田口氏の解説です。

焙煎直後の豆は盛んに炭酸ガスを発生させる。
 
そのため、その豆を挽いたコーヒー粉に90℃以上の湯を注ぐと、粉が膨らみすぎて、いわゆるハンバーグのような形のベストな蒸らしができず、炭酸ガスが泡となって噴火するようになってしまい、うまく抽出するのが難しい。
 
焙煎直後の豆を使用する場合には、80℃前後の低い温度で、粉をなだめるようにていねいに抽出しなければならない。

コーヒーのドリップって、考えることがホントにたくさんありますね。これが奥深さ、楽しさの理由でもあります。
 
ちなみに欧米では高い温度で、できるだけ効率よくコーヒーの成分を引き出すのが一般的です。
 
低い温度で時間をかけて抽出する方法は日本独自のやり方です。