以前別のコンテンツで、第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン・井崎英典さんの「豆は冷凍保存が良い」という解説を紹介しています。(下の関連記事をご覧ください)

このコンテンツでは、その詳しい理由を井崎さんの著書「世界一美味しいコーヒーの淹れ方」94~96ページから一部を抜粋して紹介します。(この本は参考になりますよ!)

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ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方
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どうやら低温で保存することによるメリットがあるようです。




「問答無用で冷凍保存」がバリスタの秘策 昇華を遅らせ風味を保つ

「どう保存するか」バリスタとしての回答は一択のようです。

保存方法は、お店や会社によっても記載が異なり、一体どの情報が正しいのか、コーヒー好きなら頭を悩ませた経験は一度や二度ではないはずです。
 
そこで私がご提案する方法は、コーヒー豆は購入後、問答無用で「冷凍して保存する」という方法です。

ここまで冷凍保存が強調されるのは、常温保存にはないメリットがあるからです。

なぜなら、コーヒー豆を冷凍することで、個体が液体になることなく気体になる昇華という現象が、約16倍遅くなるとされているからです。
 
すなわち、保存温度を下げることで、コーヒーの香りや味わいを長く保つことができます。
 

購入した際のパッケージのままであっても、ちょっと手をかけて冷凍すればOKです。

冷凍保存する際には、気密性の高い保存容器か真空パックで保存する方法が良いとされています。
 
冷凍庫の匂い移りや水分の付着を防ぐためですが、パッケージの空気をしっかり抜いた状態で保存するだけでも味わいの劇的な差を感じます。
 
ぜひ、保存の方法でお悩みの際には、冷凍保存を試してみてください。

どうやら豆の保存には、低温のほうが向いているそうです。




低温ほど挽いた粒子のバラつきが少ない 米国の研究

低温での豆の保存については、米国の大学で研究がおこなわれています。

この研究を行った、私の友人でもある、アメリカ・オレゴン大学のChristopher Hendon助教授らが「The effect of bean origin and tempreture on grinding roasted coffee」(生産国と豆の温度帯が焙煎豆の挽き目に与える影響)と題した論文を2016年に発表しました。
 
この研究によると、コーヒー豆の温度が低ければ低いほど、粒度分布(豆を挽いた際の大小の粒子のバラつき)が狭くなることがわかっています。
 
つまり、同じコーヒー豆、同じ挽き目を使用しているにもかかわらず、豆の温度が違うだけで、異なる粒度分布を生み出すことがわかったのです。
 

豆の保存には低温であるほど理想的なようです。

使用された温度帯は、常温(20度)・冷凍(マイナス19度)・ドライアイス(マイナス79度)・液体窒素(マイナス196度)の4種類でした。
 
いずれも解凍することなく、すぐにグラインダーで挽いています。
 
最も粒度分布を狭めグラフの歪度を高めたのは、液体窒素でした。その後、ドライアイス、冷凍、常温の順番で粒度分布に幅を生み出しています。
 
世界最高峰の技術や知識が集う、ワールド・バリスタ・チャンピオンシップにおいても近年、コーヒー豆をわざわざ凍らせて抽出に臨むバリスタが多くいます。
 
なぜなら、より低い温度で凍らせた方が、粒度分布を狭め、効率良く粉の表面積を大きくできると科学的に明らかになったからです。
 

 
ですので、この研究によって、冷凍するだけでより優秀な粒度分布を生み出せることがわかったわけです。

凍らせた豆はそのまま使っていいのか?という疑問は起きないでしょうか?
 
これについても、明確な答えがあります。




解凍は?注ぐお湯の温度を高くする必要は?

結論を書きますと、解凍はしなくてもOKです、お湯を熱くする必要もありません。

なお冷凍した場合でも、挽く際に解凍する必要はありません。豆は凍ったまますぐに挽いてください。
 
粉の温度が低いので、お湯の温度を上げようかな、と考える必要はありませんので(一瞬で温度は上昇します)、いつも通り抽出をしてみてください。
 
劇的な味わいの差にきっと驚くこと請け合いです。
 

これは確かに「問答無用で冷凍」でOKなようですね!