コーヒーの作用に関する研究は、世界中で行われていて、毎年800本ほどの論文が毎年発表されているそうです。
 
近年はコーヒーの認知症への作用も注目されています。

(このコンテンツは雑誌「週刊文春」2017年3月9日号38~40ページを参考にしています)




コーヒーの認知症抑制効果 フィンランドでの研究

フィンランドのクオピオ大学が2009年に発表した結果によると、
 
コーヒーを一日に3~5杯飲む人は、全く飲まないか、飲んでも二杯以下の人に比べ、認知症発症のリスクが60~65%も低い
 
ことがわかりました。
 
この研究では約1400人の男女を21年間にわたって追跡しています。
 
対象者が65歳から79歳になった時点で調査した結果、61人が認知症と診断され、そのうち48人がアルツハイマー型認知症を発症し、上のような結果が得られました。
 
認知症のリスクが下がったのは、コーヒーのカフェイン、クロロゲン酸、トリゴネリンといった成分による効果と考えられています。

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認知症への移行を防ぐコーヒーの効果 米国の研究

南フロリダ大学も、2012年にコーヒーの認知症への効果について発表しています。
 
タンパとマイアミに住む65歳から88歳まで124人の血中のカフェイン濃度を調べました。
 
2~4年の追跡期間中に、MCI(軽度認知障害)から認知症に進行した人は、MCIのまま認知症に移行しなかった人よりも血中カフェイン濃度が平均51%低いという結果が出ました。
 
認知症の前駆状態であるMCIになると、半数の人が5年の間に認知症に移行するといわれています。
 
適量のコーヒーを飲み、血中のカフェイン濃度が高い高齢者は、認知症発症を遅らせることができるのです。
 
この研究は「Journal of Alzheimer’s Disease」に発表されています。
 
研究論文の筆頭著者で、神経科学者のチュアンハイ・ケイオ博士は、同大学内ニュースで「アルツハイマー型認知症を完全に予防出来るわけではないが、発症を著しく抑制するか、発症を遅らせることができると確信している」と話しています。

トリゴネリンの効果・特性 浅煎りがおすすめ

コーヒーの認知症予防効果ではもうひとつ、トリゴネリンという成分の研究も進んでいます。
 
これはアミノ酸の一種でホタテなどの貝類やマメ科植物にも含まれています。
 
アルツハイマー型認知症では、脳の神経細胞にある樹状突起や軸索部分が脱落します。トリゴネリンは、電気信号をやりとりするこれらのパーツを発達させる作用があることがわかっています。
 
トリゴネリンは熱に弱いため、浅煎りのコーヒーに多く含まれています。
 
浅煎りだと香りや味が弱くなりがちですが、最近は浅煎りでも美味しさを追求した、トリゴネリンを多く含んだコーヒーなども販売されています。

カフェインとクロロゲン酸の働き

アルツハイマー型認知症の人の脳では、アミロイドベータやタウといったタンパク質が蓄積し、凝集化します。
 
カフェインは脳内のアデノシン受容体という物質の働きを抑制することで、タウタンパクの凝集化を防いでくれます。
 
またコーヒーのクロロゲン酸はポリフェノールの一種で、強い抗酸化力を持っています。
 
脳の酸化ストレスが上がることでも促進される、タウタンパクの凝集を抑制する効果があるのです。同時に、脳の血管を傷つける活性酸素を除去し、脳内の炎症を抑える効果も発揮します。
 
またクロロゲン酸が体内で分解されてできるフェルラ酸は、アミロイドベータの産生・蓄積を抑制してくれます。