豆をどのように保存するかは、自宅で淹れるコーヒー好きなら一度は悩んだ経験があるのではないでしょうか。

第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン・井崎英典さんが著書「世界一美味しいコーヒーの淹れ方」で、豆の保存法について解説されています。
 

 
同書の90~93ページから、一部を抜粋して紹介します。(この本は参考になりますよ!)
 
以下の文字修飾は当サイトによるものです。

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ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方
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劣化(酸化)の速さと二酸化炭素 豆の状態や焙煎度も関係

科学的に正しい豆の保存方法とは?

近年、ようやく品質的な側面から科学的に保存方法を検証し考察する取り組みが始まっています。
 
スイスのチューリッヒ大学のCoffee Execellence Centerにおいて「コーヒーの新鮮さをいかに保つことができるか」という主旨の研究が行われました。
 
研究において、保存する上でコーヒーの品質に影響を与える要素とは、
 
1 酸素
2 温度
3 湿度
4 光
 
と、されています。右記の通り、品質劣化には複数の要因がありますが、「酸化」が最も大きな要因と考えられています。
 

焙煎した豆の酸化度には二酸化炭素が関係します。

コーヒー豆は焙煎すると二酸化炭素が発生し、その二酸化炭素はコーヒー豆の10ミクロンから50ミクロンほどの細孔に閉じ込められています。
 
その細孔から少しずつ二酸化炭素が放出され、最終的には酸化のフェーズへと移り変わります。
 
二酸化炭素は細孔に閉じ込められていることもあり、一瞬で抜けることはありません。保存環境にもよりますが、大体一ヶ月程度で二酸化炭素濃度が薄れていくと考えられています。

豆を挽くと酸化は一気に進みます。

しかし、もし粉の場合であれば酸化のスピードは格段に速くなります。
 
粉にすることで豆の表面積が何万倍にも増加し、酸素に触れる面積が増え、細孔から二酸化炭素が放出されやすくなるからです。
 
また二酸化炭素の発生量は焙煎度合いによっても異なります。
 
深煎りの方が二酸化炭素の発生量は浅煎りと比べて多いとされています。(ドリップの際に浅煎りよりも深煎りの方がよく膨らむのは、二酸化炭素含有量が単純に多いからです)。
 
したがって、深煎りの方が酸化に至るスピードが速いと推測されています。また高温多湿な保存環境だと、二酸化炭素の発生量が増加し、酸化に至るスピードも速くなります。
 
「コーヒー豆の新鮮さをより長く保ちたい」と思うなら、「酸化」をできるだけ防ぐことから始めましょう。
 

酸化を防ぐには「どのように保存するか」が重要です。

ガラスなどおしゃれな容器よりも遮光パッケージのまま冷凍保存で

井崎さんは「豆はパッケージのまま保存するのがベスト」として、このように解説されています。

Specialty Coffee Associationが発表した「The Coffee Freshness Handbook」によると、コーヒーは購入した袋のまま保存した方が長もちする可能性が高い、と結論付けられています。
 
よくよく考えてみれば至極当然かもしれませんが、適切にパッケージングされたコーヒー豆は二酸化炭素によっていわばコーティングされて購入後多少の開け閉めがあったとしても酸化が一気に進むことはありません。
 

豆をガラス容器などに移すと確かにおしゃれですが、酸化防止という面では勧められません。

しかし、ガラスの保存容器やタッパーなどに移し替える場合、ガラスの保存容器やタッパーは酸素が充満した環境です。
 
したがって、せっかく二酸化炭素によってコーティングされた状態の豆を、酸素が充満した保存環境に移すことは、劇的なスピードで酸化を進めることにつながるのです。
 
保存パッケージは、パッケージの内側にアルミ箔が貼ってある光を通しにくいタイプの袋が理想的だと考えられています。

保存する温度も影響します。

また温度はできるだけ低い温度で保存するとコーヒー豆の新鮮さを保つことができるとわかっています。
 
常温保存だと一週間から四週間程度しか新鮮さを保てないコーヒーでも、冷凍保存をすると約3ヶ月ほど保存期間を延ばすことが可能です。

まとめるとこのようになります。

すなわち、より新鮮さを保つための保存方法として適切なポイントは、次の3点です。
 
1 コーヒー豆は購入時のパッケージのまま保存する
2 店舗側が使用しているパッケージが遮光タイプだとなお良い
3 高温多湿に気をつけ、できるだけ低い温度で保管する

 
したがって、遮光タイプのパッケージであれば、シンプルに買ってきた状態のまま低温で保存するのが最も効果的な方法です。

遮光パッケージの豆を買ってきて、開封後は冷凍で保存がオススメ、ということですね。