「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」に、「イノダコーヒ三条店」の店長だった猪田彰郎さんが豆を焙煎する様子が紹介されていました。
 

 
一日300kgもの豆を焙煎する苦労や、先代から厳しく叱られたエピソードが語られています。
 
同書の72~75ページから、一部を抜粋してまとめます。(この本はとても興味深く読めますよ!コーヒー好きなら一度手に取ってみてはいかがでしょうか)


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豆と会話して焙煎度合いを見極める

猪田さんは「コーヒー豆は生きもの、気持ちにこたえてくれます」として、丁寧に手をかけることの大切さを強調されています。
 
とはいえ、お店で使う大量の豆を焙煎するのはやはり大変だったようで・・・

イノダコーヒを代表するブレンド「アラビアの真珠」もずっと私が煎っていました。
 
全店のコーヒーを煎っていた頃は、一日300キロの豆を焙煎していました。
 
お歳暮の時期なんかは1トン煎ったこともあったんちゃうかな。
 
焙煎室の中は40度以上になって、もう暑い、暑い!

焙煎には、自身のメンタルも影響するそうです。

4種類ほどの豆を煎っていましたが、これは精神力がいります。何回煎っても、同じ味になるように仕上げなあかんから。
 
気力体力充実してないと、煎れない。
 
そわそわしたり、イライラしたり、自分の心に波があっても、煎れません。
 
コーヒーを前にしたら、自分をしっかり保つことが大事です。
 

 
気力が充実してくると、焙煎室の暑さは感じなくなる。そしたら、豆がはぜる音が聞こえてきます。
 
小さい豆はピチピチ~、大きい豆はパチパチ~。
 
音が聞こえ出したら、あとどんだけ煎ったらいいのかがわかります。モカは煎り過ぎたらあかん。ジャワは煎り方が浅いと物足りなくなる。
 
私は、豆とおしゃべりします。「もうええか?」「はい。上手に煎ってくれはりましたなあ」ってね。

扱いに慣れていない豆でも、”会話”すれば大丈夫。

ちょっと変わった種類の豆が来て、どうやって煎ろうかなあ、と迷ったときも豆に聞きます。
 
すると、豆の方が教えてくれるんですよ。気がついたらちゃんと仕上がっている。
 
できあがったら次はどう淹れようかなあって思うでしょう、そしたらやっぱりコーヒーの方から教えてくれる。「こうしたらおいしいですよ~」ってね。
 
どう焙煎して、どうブレンドしたら、どんな味になるか、いつのまにかスッとイメージできるようになりました。

猪田さんが先代から厳しく叱られた理由

猪田さんは今でこそ「コーヒーは生きもの」と考えていますが、仕事を始めた当初はまだその意識が薄く、先代から強烈に叱られたことがあります。

働きはじめた頃は、「コーヒーなんてただの豆や」って思っていました。まだ子どもでしたからね。それが、忘れもしません。
 
ある時、コーヒー豆をうっかり踏んづけて、先代にバーン!と叩かれて、きつう怒られたんです。
 
「豆は生きものや、おまえは赤ちゃんの顔を踏むんか!」って。
 
その言葉にえらい衝撃を受けました。
 
そうか、豆は大切な生きものなんや。コーヒー豆に対する思いが変わりました。
 
それからは豆が一粒でも落ちていたら拾います。私と豆との新しい関係のはじまりでした。